糖尿病性腎症重症化予防プログラムの効果検証と重症化予防のさらなる展開を目指した研究

(厚生労働科学研究費(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)(平成30年度~令和2年度)

予防・健康づくり大規模実証事業(令和3年度~)

【研究の背景】

 日本健康会議「健康なまち・職場づくり宣言2020」の重症化予防の取組は、1,180市町村、32広域連合が要件達成(2019全数調査)、さらに1,500市町村、47広域連合へと目標の上方修正がなされた。国の改定版プログラム(平成31年4月)が公表され、全国での広がりをみせているが、今後は保険者間のデータ連続性の確保や地域における一体的実施、保険診療との連携体制を強化することで取組の質の向上、さらなる重症化予防や医療費適正化効果につなげる必要がある。 

【本研究班について】

 

 本研究は、国保等を主体とし地域連携に基づく糖尿病性腎症重症化予防プログラムの効果検証と全国自治体への普及を目的とする。厚生労働省および日本健康会議重症化予防ワーキンググループ(WG)及び関連学会・研究班と連携し研究を進める。研究参加148自治体の実証支援を行い、進捗管理シートや対象者の健診・レセプトデータを収集、ストラクチャー、プロセス、アウトプット、アウトカム評価を行った。これまでの研究成果をもとに、プログラムのさらなる改善を図り、自治体担当者向けマニュアルを作成する。本研究で開発したKDBを活用したデータ作成ツールを実際の事業で活用できるよう国保中央会と連携を図る。
 過去の研究において、受診勧奨や保健指導事業介入翌年度の血圧、HbA1c等に有意な改善を認めた。特に介入前血圧、HbA1c高値群の約半数において、検査値カテゴリーが改善した。HbA1c変化量は腎症病期悪化群で翌年上昇したのに対し、改善群は低下、良好な血糖管理が腎症病期の改善につながる可能性が示唆されたが、eGFR低下率、新規透析導入率等は、今後中長期的に評価する必要がある。データ作成ツール(30年度開発)を用いて令和元年10月末に約1万例の健診・レセプトデータを収集した。現在、28年度事業の2年後効果分析、30年度事業の介入・非介入群のベースライン分析を進めている。プログラムを効果的かつ効率的に進めるためカンファレンスシート及び事業評価レポートを作成し自治体にフィードバックした。
 本年度は、介入3年後までの効果評価や介入有無別に翌年度検査値等を比較する。評価指標を行動変容、受療状況、血糖、血圧、脂質、尿蛋白、eGFR低下率、腎症病期変化、透析新規導入率、医療費等とし、腎症病期別、介入方法や介入頻度別等の詳細な分析を行う。 

【対象者抽出、プログラム、評価の流れ】

研究班(重症化予防)

【これまでの研究班の歩み】

研究班(重症化予防)

【研究組織】

 津下 一代  女子栄養大学特任教授
 岡村 智教  慶應義塾大学・医学部衛生学公衆衛生学教授
 三浦 克之  滋賀医科大学・医学部教授
 福田  敬  国立保健医療科学院・ 保健医療経済評価研究センターセンター長
 植木 浩二郎 国立国際医療研究センター・国立国際医療研究センター研究所・ 糖尿病研究センターセンター長
 安西 慶三  佐賀大学・医学部教授
 和田 隆志  金沢大学・事務局理事
 矢部 大介  岐阜大学医学系研究科教授
 安田 宜成  名古屋大学大学院医学系研究科循環器・腎臓・糖尿病(CKD)先進診療システム学特任准教授
 平田  匠  北海道大学・大学院医学研究院准教授
 伊藤 禎浩  名古屋大学大学院医学系研究科循環器・腎臓・糖尿病(CKD)先進診療システム学特任助教
 森山 美知子 広島大学・大学院医系科学研究科教授
 佐野 喜子  神奈川県立保健福祉大学・大学院 教授
 樺山  舞  大阪大学・大学院医学系研究科特任准教授